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漢方の話--- 新年の漢方

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

 お正月なので、御餅に関連して、お米の話から始めます。

 漢方が複数の生薬から成り立っていることは以前にも記しました。お米は生薬の名前では、うるち米の穀粒を「粳米(こうべい)」、もち米のそれを「糯米(だべい)」といいます。実際、漢方の生薬として用いるのは、うるち米の精白していない玄米で、古いものが適しているとされます。粳米は、健脾(胃腸を調え)、補気(元気をつけ)、止褐(口褐や下痢を止める)などの滋養の働きの他に、他の生薬の石膏(せっこう)や附子(ぶし)による腹鳴や腹痛を和らげるために使用されることもあります。

 粳米や糯米を蒸した後で、麦芽を用いてでんぷんを分解し、糖化させて作った飴、そう水飴のことを漢方の生薬名では、膠飴(こうい)といいます。この生薬は、健脾(胃腸障害をなくし)、止痛(腹痛や咽喉の痛みを止め)、止咳(咳止め)の効能があり、そのほか、吐血や口褐にも用いられます。胃腸虚弱な体質を改善し、冷えなどによる腹痛を和らげます。膠飴はそれらの薬効から、小建中湯(しょうけんちゅうとう)や大建中湯(だいけんちゅうとう)など「○○建中湯」という漢方の大事な構成生薬です。大建中湯は、体力が低下し、お腹や手足が冷え、激しい腹痛や腹部の膨満、腸が動くのが外からわかるような場合に適応で、腹部手術後の腸閉塞の予防に使われるようになりました。小建中湯(しょうけんちゅうとう)が胃腸虚弱な子どもによく使われることは以前記したとおりです。

 また、膠飴が止咳、止褐の効能があることから、乾燥した咳、あるいは咽喉が乾燥していらいらするときに処方される「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」にも大事な生薬として含まれています。膠飴は甘さが強いので、とりすぎると、逆に、お腹が張って嘔吐することがあるので要注意とされています。

 正月のお酒は、お屠蘇です。この屠蘇も「屠蘇散(とそさん)」という漢方に日本酒、味醂、砂糖を加えたもので、飲み方にもいろいろ作法がある由です。本来の屠蘇散は漢方ですから、使い方を誤ると危険な場合もあります。市販の屠蘇散は毒性の強い、大黄(だいおう)や附子(ぶし)を除き、量も1割程度といわれます。漢方の効能より、祝い酒「蘇(悪鬼)を屠(ほふる)」として、気を休める酒として飲めばよいでしょう。

 昨年師走に中央区協議会は筑波山バス旅行をし、地酒「悪代官」を店の女主の、「高貴」高齢者に勧められました。一気に飲み干し新年を迎えている次第です。