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漢方の話--- 桃の節句

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

 日本の五節句の一つが旧暦3月3日の「桃の節句」です。中国では、3月上旬の巳の日に川で身を清め不浄を祓う習慣があり、三国時代にこの「上巳の祓い」は3月3日になりました。冬籠もりの虫が出てくる「啓蟄」の節気の時候が「桃始笑(桃の花が咲き始める)」です。「上巳の節句」が後に「桃の節句」になりました。

 槇佐知子氏の「食べものは医薬」に桃の章があります。桃の持つ災い除けや薬効が、様々な寺社の守り札に伝えられ、風土病治療に使われたことなど興味深く記されています。

 さて、桃は中国原産で、その核のなかにある種子(桃仁:とうにん)を薬用とします。漢方の効能では、活血作用、排膿作用、潤腸作用があります。桃仁を含む漢方を記します。桂枝茯苓丸(けいしぶくしょうがん)は、割合体力のある人の、お血( 血)をとる代表薬です。そのため、ひえのぼせ、月経障害、いらいら、頭痛、便秘などを改善します。肌を白くするので、美肌剤とも言われ、このときにはハトムギ(よくいにん)を加えることもあります。さらにより体格がよく、冷えのぼせ、便秘が強い人には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が使われます。 血があると臍の周囲にしこりを触れたり、痛みがあったりします。駆 剤で体力が充実して下腹部痛があり便秘が強い場合、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)になります。昔は急性虫垂炎の際に処方されました。桃仁の排膿作用も働いているからです。疎経活血湯(そけいかっけつとう)は、「 血」と「水毒(すいどく)」のある人の関節痛や神経痛、腰痛に用いられます。水毒ですから、むくみがあったり、特に、冷えたり、酒を飲むと痛みが強くなる場合です。潤腸湯(じゅんちょうとう)は体力のない人の便秘薬です。お腹は軟弱で、ころころした兎糞状の便が特徴です。

 桃の葉(桃葉:とうよう)は、頭痛、関節痛、湿疹などに用いられます。刻んだ葉を風呂に入れて、あせも、かぶれ、湿疹、荒れ性肌に使います。また、殺虫作用も知られています。中国ではマラリアや膣トリコモナスの治療報告があるそうです。槇氏の書には、ツツガムシの特効薬として、焼き石の上に桃の葉をならべ、その上に座らせて足についたツツガムシを殺し、さらに、桃の枝の針でそれをほじりだした伝えが記されています。ふけ症には葉の煎じた液で洗髪したり、脱肛に濃い煎じ液で坐浴する方法もあるそうです。

 白桃花(はくとうか)は、桃の花ですが、古来、桃源郷と言われるように、咲き乱れる桃(もも:百々)に生命力が強く、邪気を払う力があるとされてきました。桃の節句に桃の花を飾り、魔除けに桃の花を浮かせた桃酒を飲む風習もあるそうです。花の蕾には、顔、手足がむくんで尿のでかたが悪いときや、脚気、便秘を治す効能が知られています。下す作用が強いので、虚弱な人や妊婦には用いられません。