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漢方の話--- 端午の節句

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

 つらいときや悲しいときに、子どもの笑みにであうと、ほっとします。5月5日は、1948年から施行された「こどもの日」です。

 昔は旧暦のこの日を「端(たん:はじめ)」午(ご:うまだが、読みが五に通じる)の節句」と呼んでいました。また、5月は悪月、5日は悪日とされ、端午当日は、薬草を積み、邪気を払う蓬(よもぎ)で作った人形を飾り同じく邪気払いの菖蒲(しょうぶ)を門にかけたりしました。日本では、田植えに備え、女性が穢れを払い、身を清める儀式の、「五月忌み」の風習が奈良時代からありました。

 漢方では、「よもぎ」や「おおよもぎ」の葉が「艾葉(がいよう)」という生薬です。艾葉の裏の繊毛を晒したものがお灸に使われる、「もぐさ」です。よもぎは「よく燃える木」、もぐさは「燃える草」ともいわれます。もぐさは、滋賀県伊吹山の「おおよもぎ」からのものが有名です。「艾葉」は、止血作用、止痛作用があります。漢方の「 帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」に含まれる生薬です。「主に下半身の出血(子宮、腸、痔、血尿)が続き、冷えて貧血し、熱はなくて、手足がほてり、下腹が痛んだりするもの」に使います。「よもぎ」の根を清酒につけた「よもぎ酒」は喘息によいそうです。「よもぎ」の全草は入浴に用い、冷えや腹痛、痔出血などに有効といいます。

 「菖蒲」といわれるものには、アヤメ科ハナショウブとサトイモ科のショウブがあり、薬用は後者です。これにも、ショウブとセキショウブがあり、日本ではセキショウブの根を「菖蒲根(しょうぶこん)」といい、意識障害や健忘症、胃痛、関節痛、打撲傷などに使われます。菖蒲は古来中国では霊草といわれました。菖蒲酒は、菖蒲根をよく洗い、幅2ミリと薄く斜めに刻み、日本酒1合に数枚入れ、30分程度浸して、すがすがしい香りが移れば完成です。長く漬けすぎると菖蒲のアクで酒が黄色になるので御注意を。「こどもの日」に、大人が欠かさず(?)飲み続けてきた、厄除けのお酒です。

 「こどもの日」というと粽(ちまき)です。粽(ちまき)を端午の節句に食べるのも中国の故事からです。中国の粽は、もち米に多彩な具をいれ、竹の葉で包み、加熱して作ります。日本では、もち米を植物の葉で包み灰汁で煮込んだ保存食でしたが、その後改良され和菓子になりました。うるち米の団子やもち米の餅を包む葉には、ササ、チガヤ、ワラなどがあります。特に、ササの葉には、安息香酸があり、殺菌・防腐作用と関係があります。また、葉緑素、リグニン、多糖体なども含まれ、胃潰瘍、胃炎、歯槽膿漏、口内炎などに薬理作用があり、制癌作用も研究されているそうです。