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漢方の話--- 秋の七草・木の実

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

 湯布院に出かけられた、ある先生から、「摘み草せんべい」をいただきました。自然のめぐみが残されている、湯布院の野山の草花を手焼きにしたせんべいです。「秋は、つゆくさ、りんどう、よめな、のこんぎく、げんのしょうこ…」と添え書きがありました。

 竜胆(りんどう)の花は源氏の家紋などで知られていますが、漢方ではその根や根茎を使います。一般に、薬草採りは春と秋に行われますが、春は「草を摘む」といい秋は「草を掘る」といいます。春は葉などを使い、秋の薬草は多くその根を用いるからです。生薬名としては、漢字では同じ竜胆でも「りゅうたん」と読みます。葉は竜葵(いぬほおずき)の如く、根の味は「熊胆(ゆうたん):熊の胆」よりも苦い「竜の胆」の如し、からといわれています。中国の原植物は「とうりんどう」のことで、日本では自生がなく、「りんどう」は日本原産です。「竜胆」は、胃液分泌亢進、腸管運動の促進、抗菌、抗炎症作用が知られています。漢方の、「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」は、急性・慢性の排尿痛、頻尿、混濁尿、帯下、陰部湿疹、陰部掻痒症などに用います。この主要な生薬がもちろん「竜胆」です。腰や下肢の関節や筋肉痛、特に、冷えや湿気で悪化する場合用いられる漢方に「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」があります。これも「竜胆」が重要な生薬です。

 「万葉集」山上憶良の秋の七草のうた「はぎのはな おばなくずばななでしこのはな おみなへしまたふじばかま あさがほのはな」の「あさがほ」が、実は、「桔梗(ききょう)」だったといわれています。生薬の「桔梗」はその根を用います。「桔梗」の名は根が結(桔)実して、硬(梗)いことによります。朝鮮半島では、春から夏に娘さんが桔梗の根を掘りにでかける姿が、民謡トラジに歌われています。江戸時代、形や味が似ているので、「桔梗」が朝鮮人参として売られたこともありました。「桔梗」には鎮痛、鎮咳、去痰、抗炎症、解熱作用、排膿作用などがあります。声枯れや咽頭痛に「桔梗湯(ききょうとう)」。この漢方はゆっくり飲み下します。急性上気道炎に「参蘇飲(じんそいん)」、慢性気管支炎に「清肺湯(せいはいとう)」、湿疹に「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」、にきびに「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」いずれも「桔梗」が含まれています。

 秋の赤い実というと、「イチイ」「カラスウリ」「ガマズミ」「アキグミ」そして「クコ」。
「枸杞子(くこし)」は古くから不老長寿の生薬として知られていました。春のクコの葉を天精草、夏の花を長生草、秋の赤い実を枸杞子といい「枸杞提灯(くこちょうちん)」の別名があります。冬の根の皮を地骨皮(じこっぴ)といい、中国では道教の修行者が好み、「仙人杖」と呼びました。四季のこれら花、葉、実、根皮を併せて丸薬にしたものを「地仙丹(ちせんたん)」といい仙人の薬といわれました。春、葉はあえ物にしたり、炊き込みご飯にしたり、茶葉として「クコ茶」としても利用されました。陰干しにした「天精草」を一日8gずつ300mlの水で煎じたお茶で飲むと、動脈硬化や高血圧の予防、冷え症に効きよく眠れるといいます。老化による眩暈、視力減退、白内障には「六味丸(ろくみがん)」に菊花(きくか)と地骨皮(じこっぴ)を加えた「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」が有名です。慢性排尿異常や、消化機能の低下、全身倦怠、四肢の冷感、神経過敏などに用いられる、「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」も地骨皮を含みます。クコの生の果実500gを焼酎1.8Lに1ヶ月漬けたのが「クコ酒」です。これを「小さな盃」に2〜3杯飲みます。「肝」「腎」を補い、血を補い、目を明らかにする効能が知られています。

 WHOウォークイベントでネパールビールとすれ違い、八重洲駅前の福島アンテナショップで「ゆり」と再会しました。しかし「クコ酒」があればそちらを先に飲むべきか…。