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歯の話--- 始まりから終わりまでの話し

  氷川下セツルメント歯科 歯科医師
  安 梨淑

 私がまだ歯科医師になりたての頃、氷川下のまわりには銀行や保険会社の社宅が多く、都心のわりに子供がたくさんいた。子供の虫歯がまだまだ多いころで、小児歯科専門医などない時代氷川下歯科には毎日子供の泣き声がひびいていた。

 子供が歯医者ぎらいになると、その子の虫歯予防計画に齟齬を来たす。だからその子のファーストデンティスト(最初の歯医者)の責任が重い。だから歯科医は歯科受診が初めての子供を迎える時には常に緊張する。どうか良い出会いであるようにと。

 時代は移り変わって地域から子供は減り、超高齢化が進んできた。町中を毎朝たくさんのデイケア送迎バスが走っている。

 高齢社会での歯科医は良いかかりつけ医になって歯周病と闘い、患者の歯をできるかぎり長持ちさせる使命を担う。歯周病は歯がある限り完治しないやっかいな病気で成人の歯の喪失原因TOPだ。しかも歯周病との闘いを有利に進めるにはひとりひとりの特質に合う戦略が不可欠だ。だからマイデンティスト(私の歯医者)が必要になる。長寿社会では痛いときだけ歯医者に来るやり方では歯を守っていくことはできない。

 さて超高齢社会は別名要介護社会である。医療が在宅医療にシフトしてきているように、歯科の在宅往診も増えてきた。近年増えてきたのは口腔ケア往診だ。寝たきりで口から食べてなくても、歯石がたまって歯肉から出血するのをご存知だろうか。定期的に口腔ケアで肺炎を予防するのはラストデンティストの仕事の一つだ。ラストデンティストのもう一つの仕事はできるかぎり良い義歯を作っておいしい余生をサポートすることだ。

 食べる楽しみを与えられるならば歯科医の仕事もまんざらではない。そのためには日々研鑽しかない。