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病気の話…認知症について(3)認知症とせん妄

東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
中島 昭
 

 今回は、認知症と症状に似通った点が多い「せん妄」という精神症状の話です。

(1)80代の父。ある日突然、背広を着て会社に行くと言い出した。勤めていた会社の人が先日送ってきてくれた。毎日見張っているわけにもいかず、私は眠れず疲れてしまった。

(2)70代の母。「夕方、知らない子どもが数人遊びにくる、いつの間にかいなくなってしまうの」とテーブルにお菓子を用意している。これは幻覚?

(3)もの忘れはあるが、独り暮しで生活はしっかりしていた母。骨折で入院して3日後、私のことを自分の妹(娘の叔母)と思いこむようになっている。認知症になってしまったの?

(4)この夏、食欲が落ちていたが、抗うつ薬でさらに体重が落ちた。最近は、会話も少なくなりぼんやりして横になっている時が多い。うつ病でいいの?

 せん妄は、様々な身体疾患や身体の状態を背景にして、(a)急激にその症状が出現します。最もわかりやすい症状は、(b)幻視や錯覚といった知覚の歪みです。子どもが部屋の隅に神出鬼没に現れる東北に伝わる「座敷童」は、せん妄の症状が言い伝えになったと考えられています。身近な人への(c)被害妄想や攻撃性、興奮、情緒不安定が強く現れ家族が動転してしまうこともよくあります。(d)注意力低下、近時記憶低下、見当識の混乱、これらの認知機能が(e)日や時間によって動揺する日内変動も大きな特徴です。昼夜逆転や途中覚醒といったE睡眠と生活リズムの乱れがほぼ必発します。

 せん妄は、上記(2)のような精神病症状(幻覚や妄想)といった精神の変調が明らかな「過活動せん妄」と見過ごされやすい「低活動せん妄」に分類され、実際にはその混合型として現れます。

 認知機能の低下という共通症状のために、アルツハイマー型認知症(AD)とせん妄は、(3)のように誤解される場合が少なくありません。ADは緩徐に進行、、せん妄は急激に発症という違いがあります。(4)のようにうつ病と間違われている割合は10%以上あると考えられ、抗うつ薬や抗認知症薬の使用は症状をかえって増悪させることとなります。

(1)のように、その対応に家族が疲弊して共倒れ状況になる危険性があります。

 次回は、せん妄の原因と対応について説明します。