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漢方の話… 雑煮も粥も百薬の長

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦
 

 雑煮について、「守貞漫稿」は次のように記している。「正月、二日、三日、諸国ともに雑煮食う。雑煮本名を(ほうぞう)と言うなり。五臓を保養するの意にて保臓と書すなり」。そして、「京都はイモガシラを加え、大阪は丸餅を焼き、小芋、焼き豆腐、大根、乾あわびの味噌汁にて製す。江戸は切り餅を焼き、小松菜を加え、鰹節を用いし醤油の煮出しなり」。と続ける。このように、「雑煮は餅に大根、芋、しいも、昆布、打ちあわび、いりこ、すずな等を加えてあつものとして喰う。多種を交え煮る故に雑煮と称するか」(俳諧歳時記栞草)。なお現在鶏肉を入れることもあるが、江戸時代、鴨の肉が出てくる(鴨雑煮)。そう、鴨は年末必需品であった。

 ところで、酒を「百薬の長」というが、それは、塩や鉄などと並べて貴重品の肩書きをつけ、実は税金をとるための口実だったとか。しかし、米は本当の「百薬の長」である。以前にも記したが、生薬名として、もち米の穀粒を糯米(だべい)、うるち米のそれを粳米(こうべい)という。漢方では補気(元気をつける)・健脾(胃腸の働きを調える)・止渇(口渇や下痢)の効能があります。のどの乾燥からの痰が少ない咳き込みなどに呼吸器疾患に処方される「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」は、その止渇の効能(うるおいの作用)から「シェーグレン症候群(乾燥症候群)」に用いられることで知られています。

 この処方で麦門冬湯と並ぶのが粳米である。また、虚弱な小児や夜尿症に用いられる「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」や術後と腸閉塞の予防に使われる「大建中湯(だいけんちゅうとう)」には、「もち飴」が入っているが、さらに薬効を高めるため、粥をすするように勧められることもある。ところで、「白粥(しらがゆ)」は古来、長寿の食といわれる。また、小児の嘔吐や下痢にこの粥を煮て味噌汁少々まぜて、温かいのを小さじ1杯服用させると効くことが伝えられている。

 暮れに支部のみかん狩りで三浦海岸へ。みかん狩り園のご主人に「三浦の地酒は?」「大根焼酎があるそうです」「おいしい?」「飲んだことがないので」「……」。

 新年は漢方薬局から提供された「屠蘇散」で、神妙に雑煮をいただくことに。

「雑煮たく 煙も江戸の 春霞」(江戸時代の川柳)。