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病気の話…認知症について(4)せん妄の原因と対応(1)

東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
中島 昭
 

 もの忘れ外来では、せん妄の原因について本人と家族に以下のように説明しています。「熱発、脱水、低栄養、睡眠障害、薬の作用などがきっかけになることが多い。身体の病気、例えば肝臓、腎臓、呼吸器、心臓の基礎疾患がある人や脳血管障害がある人は、その基礎疾患の症状変化のサイン(兆候)として発症することもある。」

 これを詳しく説明します。

 せん妄は、意識障害の結果として症状が出現します。意識障害とは、覚醒水準が低下した意識混濁状態のことです。意識混濁は、意識の清明度が低下した程度に応じて、傾眠、半昏睡、昏睡と分類できます。

 高度の意識混濁状態である昏睡では精神症状自体が出現できません。せん妄が認められたということは、その多くが、軽度の意識混濁状態に陥り始めているということ、そのもとに様々な意識変容が徴候として出現しているという事を意味しています。

 意識変容は、知覚の変容、認知機能の動揺、思考の変調、情動の制御の低下、意欲の低下など人間の精神活動の全分野における変調として表現されます。

 知覚の変容では、ささいな物音や物影に敏感になり、それが一過性の幻聴や幻視として、「誰かが玄関の外に来た」「そこを小さな子どもが通った」「部屋の隅に動物がいる」などの訴えになります。

 認知機能の動揺では、記憶がすっぽり抜け落ちたり、注意力が散漫になり今までできていたことができなくなったりしますので、「急に認知症になってしまった」ように家族には見える事でしょう。

 思考の変調では猜疑心や被害妄想が急に強くなり攻撃的に見えることがあります。情緒不安定となり子どものような心理になったりもします。意欲低下や食欲低下などうつ状態となることもよくありますが、うつ病ではありません。

 せん妄は、知情意すべての領域に及び、たいへん様々な症状を見せ、過活動型、逆に低活動型、その混合型として現れることになります。

 高齢者では、アルツハイマー型認知症(AD)が発症していることも多いので、認知機能の低下ということだけを見れば、それがアルツハイマー型認知症の進行なのか、せん妄の症状の一つなのか、その両者の混合症状(併存症状)なのかはすぐにはわかりません。身近な家族や患者さんを預かった最初の医療者・介護者が、せん妄を見落としたり誤解したりすることは起こり得ることですが、それは、せん妄が急に症状が出現する事、症状の変化があいまいな場合もある事、一般に併存症状の評価は複雑である事のためです。