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病気の話…認知症について(7)せん妄の予防と治療・対応(2)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

 治療と対応について、非薬物療法と薬物療法に分けて具体策を順次、考える。  

(1)非薬物療法 

 (1)睡眠と生活リズムの確立。
 せん妄の勢いが強く、強い興奮と睡眠障害がある場合は、向精神薬(主に非定型抗精神病薬)治療が必要となる。それは後述。

質の良い睡眠が確保されているか
 最も大切なことは、安定した睡眠の確保である。せん妄となりやすい状態の方の脳は、余力が小さく、疲れやすくなっている。最低、1日合計8時間から9時間以上の睡眠と熟睡が必要である。
 物の本を参考にすると、睡眠に向けて・低照度の照明・騒音の低減・リラクゼーションのための背中のマッサージや温かい飲み物や音楽などが推奨されている。マイナスとなることはないので、これらを試みることも大切であるが、通常の家族やスタッフは既に試みており、それで解決しないから悩んでいることが多い。

生活リズム確立と介護資源の活用

  質の良い睡眠と生活リズム確立は表裏の関係にある。それゆえ、認知症の方のせん妄予防において、最も効果的な対応は、地域のデイサービスを利用することである。認知症が高度でありながら、安定した在宅生活を長期間維持している方々は、デイサービスとショートステイといった在宅介護資源を活用している。
 しかしながら、当初は、本人がこれら社会資源の利用を拒否することがほとんどある。本人の気持ちを尊重したいと思う家族は、最初は利用をためらい悩みがちである。焦らずに、本人にあったデイサービス施設を見つけて、粘り強く本人を促すことから始めることとなる。
 デイサービスの代わりに、家族が、朝夕の散歩、料理作りを一緒にする、声かけと見守りを継続することも、もちろん、有効で立派な対応である。
 ただし、それが実現できるのは、介護家族が健康で複数いること、本人の様々な認知症の症状が一定の範囲内であること、かつ身体状態が悪くないということ、これらの条件内にある場合と考えられる。

家族自身の健康とケアの大切さ

 家族が、問題を抱え込み過ぎないためには、本人の心身の状態だけではなく、介護家族の疲弊度を、その家族が自身で客観的に評価(アセスメント)し、自身の健康とケアについて考えていくことが大切である。マンツーマン対応をしている場合に、その家族にかかる負担は徐々に大きくなっていく。長い介護生活の中では、共倒れとなるリスクが高まることを理解しておかねばならない。
 介護に取り組んでいる家族は、どの家族も、愛情深いのであるが、時として、自身の努力の限界を超えて、問題を抱えこんでしまいがちとなる。その際には、介護対応についての経験と専門性のあるケアマネージャーや医療、保健・福祉スタッフ(地域包括支援センターや保健相談所)の助言を参考に状況について冷静に考えていくことが大切である。
 認知症、せん妄のある方の生活を支えるという事は、長期戦であり、将来に至る見通しと責任が必要とされている。