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病気の話…認知症について(8)せん妄の予防と治療・対応(3)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

 せん妄の非薬物療法の二つ目は、見当識(オリエンテーション)を繰り返しつけていくことである。  

(2)睡眠と生活リズムの確立。
 転居、施設入所、入院と環境が大きく変わると、それを機に、せん妄は生じやすい。日常生活では、本人はしっかりしていると家族が見ていた場合には、その急な変化に驚くことになる。

 父母のどちらかが他界し、一人暮らしになったので、同居を始めた場合や、身体の病気で入院した場合によく生じる。家族はその決断が間違っていたのではないかと後悔することがあるが、その優しい思いからの行動は間違いではない。遅かれ早かれ、せん妄の問題に向き合う時期が、多くの家族に訪れる。大切なことは、その事を学習して適切に対応していく準備をしておくことと考える。

家族の面会と声かけ
 内科や外科などの病棟入院時に、家族はできる範囲でお見舞いをしているだろう。自分たちの生活もある中、時間を作ってお見舞いに来てくれたことに、患者である本人は、励まされ心強く思う。
 認知機能が低下し始めている患者さんにとっては、その面会、お見舞いは、心強さとともに、せん妄の予防という意味がある。患者さんは、「自分が、今、どんな状況にあるのか」という「見当」に揺らぎが生じている。

 見当識とは、時間、場所、人物、状況に関するもので、近時記憶とともに認知機能の土台となっている。せん妄により、その近時記憶と見当識が強く低下している場合は、「家で生活していること」と異なる「入院生活」について、「何故、こんな状況になっているのだろう」と本人は理解できず混乱しやすい。

 「どんなことがあって入院となったのか」「今日とその出来事の時間経過」「家族のこと、入院中の担当医師やスタッフのこと」「家から見てどこにある病院か」「現在の状態とこれからのこと」などを、会話の中で、繰り返し話し、見当を何回もつけていくことが、せん妄の予防となる。

 入院中は、担当の看護師を中心に、複数の職種スタッフが声をかけ、話を聞いている。それでも、親しい家族や知人のお見舞いと声かけが患者さんには一番の安心となる。  

 次回は、ケースをあげて、具体的に問題点を考えていこうと思う。