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病気の話…認知症について(9)認知症とせん妄のケースカンファレンス(1)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

ケース(1) うつ状態?認知症の進行? 女性Aさん、80代前半。
相談者 友人B、地域包括支援センター保健師C、担当ケアマネD。
相談内容 X年9月中旬、当院精神科にB、C、Dに付き添われ車いすで来院。
 友人B「Aさんは一人暮らし。8月までは一緒に買い物をしていた。おしゃれで、明るい人柄。2週間前から買い物も外出も嫌がるようになった。何か言うと私に突っかかり急に怒り出すようになった。食事量はどんどん減って、1週間前からは活気も無く今度はおっくうな物言いに。横になっていることが多くなった。」
経過 そのため、友人Bが地域包括支援センターに連絡。保健師Cが、Aの自宅訪問をし、緊急でケアマネDの支援を決めケースワークを始めた。CとD二人は1週間毎日、見守り訪問。
 C「3人で協力して食事の世話をしてきたが、脱力、衰弱は続いている。この1週間、内科や精神科病院の入院先も探したが見つけられなかった。」
外来の様子 A「私は子どもも身寄りもないから、いつ逝ったっていい。人様のお世話になるのは嫌い。ヘルパーもいらないし、入院なんかしない。Dさんが優しいから今日だけ顔を立ててここに来てあげたのよ。」
既往歴 入院歴はなし。50代、軽度の「うつ」でE大学病院に通院。
現在の通院歴 70代に近医F内科クリニックに転医、E大学病院の内服薬継続。処方内容、スルピリド150、トフラニール20、ソラナックス1・2r(抗うつ薬、抗不安薬)。
 60代よりG内科医院通院。高血圧症、ブロプレス8、アムロジピン5r(降圧薬)。
X年8月中旬より、アリセプトD5r(抗認知症薬)処方開始。
初診時所見(太字は異常値)身長、体重:145cm、29kg (X年5月36kgからマイナス7kg )。血圧、脈:98/62、80整。血液検査:総タンパク5・7(正常値6・5以上)、アルブミン3・0(3・7以上)。血糖値97(正常)。血中酸素飽和濃度:96%(正常95以上)。
神経学的所見 脱力。右片麻痺等の異常なし。
頭部MRI画像 軽度のびまん性脳萎縮と軽度の虚血性変化(加齢内の全体的な脳萎縮傾向を示唆。脳梗塞所見はなし)。
 飲酒:機会飲酒。食欲:低下。睡眠:途中覚醒。
精神的現症 意識水準:清明〜やや低下。見当識:時間、場所、人物は良好、状況の理解はやや低下。全体的には疎通性は悪くないが、ややひねくれた物言いと拒否的態度。

高齢化社会の地域の課題 Aさんは一人ではない。毎週、同じような相談が地域包括やケアマネから続いています。医療生協の組合員の皆さんは進んで医療や介護を支え、お互いを支え合っています。他方、孤立したAさんは地域に多数います。市民と地域の医療・看護・介護のスタッフ、行政の職員らが連携してネットワークを創り上げていくことが大切な状況となっています。
 さて、Aさんの症状の原因と病態の中心は何でしょうか。認知症は進行しているのでしょうか。せん妄はあるのでしょうか。そして、Aさんは医療や介護の介入を拒んでいますがどのような対応をしていくべきでしょうか。
 次回はこのケースの症状の評価、治療、対応を説明します。