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病気の話…認知症について(12)
認知症とせん妄 本人と家族から数多く寄せられる質問(1)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

(1)「認知症ともの忘れ(加齢の変化)との違いは?」 
 認知症、主に、アルツハイマー型認知症(AD)、脳血管性認知(VD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)の場合は、加齢とともに病態と症状が進行し、認知機能と日常生活の能力が徐々に低下していきます。

 「もの忘れは、加齢変化とともに、自然に認知機能や精神と行動の機能が低下していく状態のことです。家族の間で、「あなたも、もう年ね」「お前こそ」と、言い合っているような状態です。

 認知症では、体験(エピソード)の記憶がすっかり抜けてしまうこと、近時記憶低下を中心とした強い記憶障害が認められることが特徴です。

 例えば、家族や友人との約束時間を忘れてしまい、困ってしまうことは、皆さんもよく経験していると思いますが、家族や友人に、「何しているのよ」と怒られて、すぐに思い出して謝れるならば、それはもの忘れです。「何のことを言っているの?」と、言い返して、さらにあきれられ、あれこれ、約束した状況の情報を追加されて、ようやく思いだした場合…、これも、もの忘れです。後者の場合は、しばしば、落ち込んで、「先生、私、認知症が始まってしまった、少なくとも軽度認知障害(MCI)だと思うから、MRI検査して下さい。」と相談に来たりします。

 認知症では、本当に、その約束したこと、その時の体験が、全く抜け落ちているために、他人事の反応となります。これは、記銘ー保持ー再生という記憶機能の中の、新しい体験を記銘し覚えること、この機能が低下しているために生じているのです。

 また、認知症では、日常生活に、明らかな支障が生じています。相談で家族がよく口にすることは、「薬の管理やお金の管理が一人ではできなくなってきた」「料理の手順、電気機器の操作がわからなくなった」というものです。さらに、進むと、「服を自分で着られなくなった」「トイレの使い方がわからないのか、何度も失敗する」という話になります。

 ひと言でまとめると、エピソード記憶と近時記憶低下そして生活能力の低下が一定程度強く認められ、それが続いている場合は、「もの忘れ」でも、「認知症」を考えることになります。