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漢方の話… 陀羅尼助、主役は黄柏

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦
 

 昔、診療所の裏口に井戸のポンプがあり、今は閉じられて、水受け場のスペースが残っています。5月下旬、お隣のNさんがそこに「ビオラ」の鉢植えを置いてくださいました。足元で可憐な黄色の花々が揺れるのを見ると「はい、あなたのことはわすれません」。

 さて、7月は秋が新しく始まるので、旧暦では「新秋」といいます。古語では「文月」「七夕月」などとも呼ばれます。陽気の変動が激しく、冷房で不調になる方が増えます。診察室で「お腹をこわして家にあった陀羅尼助を飲みました」との訴えについ「珍しい」と言ってしまいました。「陀羅尼助(だらにすけ)」「お百草(おひゃくそう)」「煉熊(ねりくま)」などは昔からある、民間薬で、これらの主役が「黄柏(おうばく)、きはだ」です。梅雨ごろに黄柏(きはだ:黄色のカシワ)の樹皮をはいだ後、コルク層(これは西洋ではワインのコルクになる)を取り除き、陽で乾かす。黄柏に加え、センブリ、リンドウ、アオキの葉などを煮詰め竹の皮に延ばして、携帯用に用いたそうです。今は、丸薬などになっています。山岳信仰が真言・天台の密教と結びつき、中世以後、寺院の密教から離れ、山伏を中心に修験道という在野信仰になりました。その根本道場が修行僧のメッカ大峰山で、そこで、「陀羅尼助」が生まれたのだそうです。「苦い薬、舌が黄色になる」薬として知られています。

 効能は胃腸の病の内服薬、そして捻挫、打撲、切り傷、神経痛、リウマチなどの塗り薬、貼り薬として、またただれ目に目薬としても用いられました。染料にもなりますが、子どもの衣類をこれで染めて、病気の予防に使った「本来の外服?」でもあるそうです。黄柏の薬理作用は、利胆作用、抗潰瘍作用、肝障害改善作用、免疫反応抑制作用、血圧降下作用、抗菌作用、止瀉作用、鎮痛・鎮静作用などがあります。

 黄柏を生薬として含む漢方はいろいろありますが、代表的な「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」を取り上げます。比較的体力があり、赤ら顔、のぼせ気味、出血傾向がみられ、また、それに、胸苦しさ、動悸、みぞおちのつかえ感、精神不安、不眠などを伴う人に使います。保険適応症は、鼻出血、喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚?痒症、胃炎、不眠症、血の道症、そうそう二日酔いもそうでした。「ビオラ」の英語名は「ハーツ イーズ(心を癒すものたち)」です。黄連解毒湯を事前に飲んで、一茶を思い、「山頭火」で。