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病気の話…認知症について
認知症とせん妄 本人と家族から数多く寄せられる質問(3)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

(3)「怒りっぽい、夜中に何度も起こされ、眠れなくて疲れた」 
 本人と家族の生活を困難にさせる症状

 在宅介護をしていくと、本人に則した適切な対応を心がけていても困難な状況に陥ることがあります。 

 優しく話しかけても常に怒りっぽい(易怒性が強い)、食事や入浴やデイサービスの際に頑なになる(拒否・拒絶)、「財産を狙っている」「嫌がらせをする」と身近な介護者を強く疑い興奮する(被害妄想)、さらに、「怒鳴る・叩く・引っ掻く・蹴る」といった攻撃的言動が続くなど思いがけない事を経験することがあります。 

 それに加えて、不眠症状やせん妄のために、夜も眠れなくなると生活が成り立たない共倒れの状況となってしまいます。 

 BPSD(精神と行動の症状)

 これら、生活上の大きな支障となる症状は、BPSD(認知症にともなう精神と行動の症状)と総称されます(資料参照)。近時記憶と見当識の低下など認知機能低下を認知症の「中核症状」と言うのに対し「周辺症状」とも言われます。 

 BPSDは個別性が大きく、出現しない方もいれば、強い症状となる方もいます。経過の中で症状が変化しやすいことも特徴です。 

 「あなた(嫁や子ども)が私の財産を狙っているのは知っている、でも、料理は美味しいから許してあげる」という場合と、「あなたが私の財産を狙っていて、こっそり毒を盛っていることは知っている」と、毎晩、親戚中に電話をかけている事態とでは、被害妄想の症状の強さは異なります。前者は、家族と親戚の方が理解を深めつつ見守る経過で良いでしょうが、後者では、本人も家族も疲れ果ててしまい生活が困難になってしまいます。

  対応の基本と薬物療法

 認知症やもの忘れの相談は、大きく二つに分かれます。中核症状の相談、そして一定の強さを超えたBPSDの相談です。本人と家族の生活で大きな問題となるものは、実は「BPSDの程度の強さ」の方です。 

 認知症の対応の基本は、第14回で述べた通り、先ず行うべき事は、環境調節、状態に応じたケアの工夫、そして身体管理です。しかし、その努力を尽くしてもBPSDが改善しない場合があります。真面目な家族の中には、自分達の接し方が悪いのかと悩みこんでしまう方がいます。 

 認知症に限りませんが、一般に、「精神症状」によって、本人と家族が社会生活上の困難さに遭遇する際に、決定的に影響を与える因子は、「症状の強さ・勢い」です。 

 BPSDについては、多角的な視点から原因と対応を検討するべきですが、生活が破綻してしまうような強い症状の時には、向精神薬による適切な薬物治療が必要となる場合が少なくありません。 

 次回は詳しく向精神薬の薬物療法による対応について考えてみましょう。