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病気の話…認知症について
認知症と精神症状、症状に苦慮するケースの対応(1)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

今回からは、本人と家族の生活に大きな影響を与える精神症状について、具体的に考えていきたいと思います。

主治医意見書にある周辺症状、精神・神経症状 

資料は、要介護認定時に参考とされる主治医意見書の一部、「3.心身に関する意見」の項目です。これらの周辺症状(BPSD)の実際は、生活を共にする家族あるいは当事者として体験していないと、なかなか理解できない面があります。

 攻撃的な言動(ケース1、80代男性Aさん)

 Aさんは、妻と二人暮らし。他県に一人娘がいる。大病なく、50代から高血圧症でBクリニックに通院。会社を定年退職後は、地域の太極拳のサークルなどに参加、身体は健康的。

 70代後半、もの忘れ症状で大学病院を受診。アルツハイマー型認知症と診断され、抗認知症薬a内服。80才からはC施設のデイサービスの利用を始めた。

 1年前、理由なく、妻を怒鳴りつけることが増え、以前の大学病院を再受診。新たに抗認知症薬bと漢方薬cが追加された。しばらくは落ち着いたが、再び、興奮するようになり、さらに、食事のムラ、不眠症状が重なった。
妻も眠れず疲れてしまい、施設長Cに相談、ショートステイ利用も始めた。娘も父と母のことを心配し、できるだけ実家を訪ねていた。

 しかし、デイサービスでも他の利用者に対して攻撃的な言動を示すようになり、当院精神科に本人、妻、娘、C施設長、介護職員で受診。

 相談内容

 本人は「自分ではしっかりしていると思っていますが、こちら(妻)に任せますよ」と診察時の応答は落ち着いている。職員と検査に。

 「穏やかな人だったが、イライラして怒りだす時は、目つきが変わる。夜中に何度も起きだして、トイレに5回も10回も行く日がある。一度、注意したら、思いっきり叩かれた。」

 C「デイサービスの最初はとても紳士的な方。最近は、利用者に、『向こうに行け』『お前は帰れ』と。何か理由があるのかと思ったが、突然、始まる。間に入った男性職員を叩いたり蹴るようになった。」

 「そんなことがあったの。母との間だけかと思っていた。私には暴力的な事はないので、母が口出し過ぎるのかと思っていた。大学では、認知症の薬を調節してくれたが良くならない。精神科病院の入院を紹介されたが、そこまでの状態とは思えない。」

 「身体が健康なうちは家で見ていきたい。認知症の薬は進行をゆっくりにしてくれると言うので止めたくない。精神科の薬は、こう言っては失礼だが、恐いイメージがある、使いたくない。娘にもこれ以上、迷惑をかけたくない。」

 娘「薬は副作用もあるでしょう。健康な父に使いたくない。」

 C「女性職員にも強い口調になり、みんな怖がっている。泊りでは、一人の職員がつきっきりで対応できない、他の方も落ち着かない。皆さんに、利用してもらいたいと思っているが。」

  「私も眠れない日が続いて、ショートステイがないと身体が持たない。」
この1年間で、同じような相談が多数ありました。どのように対応すべきか、一緒に考えていただければと思います。次回は問題点と道すじを論じます。

主治医意見書(部分)
(資料)主治医意見書の一部