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漢方の話… 艾(もぐさ)にも餅にもならず花蓬(よもぎ)(江戸川柳)

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦


 3月は旧暦では弥生(やよい)、古語では「夢見月」と言い、その3日は「桃の節句」。

 桃花酒を飲み、病を除き、顔色をうるおす。また雛祭りで、雛壇の下では、女の子が「白酒」を招待した男の子に振舞う。春、野で摘まれた蓬は「餅草」としてつかれ、草餅として添えられる。昔、草餅の草は「母子草(ははこぐさ)」だったが、母と子をつくのはどうもということで、その後、蓬に変わったとか。夏、生長した蓬の葉が摘まれて揉まれて、艾の原料になる。さらに「とうのたった」花蓬でも民間薬に使われる。中国では約2千年前の書物に灸療法が記録され、日本には平安時代に伝来したといわれる。百人一首にも「さしも草」としてうたわれている。

 江戸の頃には「奥の細道」に記された「三里の灸」の効用のように、庶民層まで普及していた。「くすりの民俗学:三浦三郎著」によると、「百病を避けるため、健康保持のため、お灸を据える習慣があったので、艾の需要は安定していたらしい。江戸時代にお灸を据えるための心得をこと細かく書いたテキストもあった」。現在、艾用よもぎは新潟県、富山県などで生産されている。

 艾の供給といえば、日本橋小網町のあのお店が有名で決して「細き煙で世渡り」していたとはいえない繁盛だったのではないか。以下は、艾の用途などM鍼灸師に教えていただいた事を主に記す。「散りもぐさ」と呼ばれる米粒大にちぎり、「つぼ」に乗せ点火するための艾があり、国産で高価(gあたり何百円?)。1回分ずつを切ってそろえた「切りもぐさ」。家庭用に2g袋詰めの「ばらもぐさ」。いずれも、「つぼ」に乗せて治療するので「点灸用」である。

 昭和初期、群馬県の赤羽幸兵衛鍼灸師(皮内鍼も発明)は、鍼灸両方の効果を期待して鍼の頭に艾を乗せる「灸頭鍼」を考案した。その後改良されているが、「灸頭鍼用」で用いる艾の量が多く、国産と中国産を混ぜたものを使っている。灸頭鍼など、煙の多い灸療法はいろいろな理由で施術する鍼灸師が少なくなっている由。その他、皮膚と艾の間にしょうが・にんにく・みそ・塩などをおいて据える「温灸用」。せんねん灸などには「もぐさ加工品」が使われる。

 眼前には「白酒」ならぬ「紅玉(ルビー)」ラベルの青森「六根」が微笑んでいる。「清浄」までゆくには多くなり、灸をすえられそうで、「少々」にしておくか。「新医協・鍼灸部会発行、はりきゅうの話」是非、ご一読を。