ニュース&トピックス


病気の話…認知症について
認知症と精神症状、症状に苦慮するケースの対応(3)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

 精神と行動の症状が認められた時、高齢者、認知症の方の診察で常に念頭に置くべきことは、前回記した薬物療法の影響と適否、そして身体疾患の増悪、身体状態の変化がないかという鑑別診断です。

せん妄の鑑別診断 

 高齢者の外来診療では、せん妄に関してだけでも、以下のような大きなグループを想定して診察しています。

第一は、脳血管障害を初めとする頭蓋内の急性病変、感染症などを直接原因とする病態です。早期診断と治療が、その予後を大きく作用する群。

第二は、加齢や認知症を背景に、環境変化、家族関係の変化を契機として発症する一群。家族への説明、教育指導、向精神薬の適量治療で、回復する可能性がある群。しかし、せん妄の症状の勢いが強く、対応が困難となるケース、長期間遷延するケースもあります。

第三は循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病、肝疾患といった生活習慣病とも関連する多くの内科基礎疾患の増悪変化の徴候としてせん妄となる群。

独居高齢者と認知症の方には、地域包括支援センターが関わるケースが増加していますが、内科を初めとした地域の医療機関との連携、身体精査、情報共有が大切となります。

第四は、ドラッグ、薬剤性のせん妄群。高齢者の精神症状では、薬剤性のせん妄のケースが大変多い。認知機能低下により、本人のコンプライアンス(適切な内服行為)が低下している問題、独居のため客観的評価をする家族がいない問題、薬物耐性や許容範囲の変動の問題がベースにあります。高齢者では複数の身体治療をしている人が多く、かかりつけ医が複数となっている方が多いので、前者の問題と考え合わせると、主治医機能や薬剤師の積極的な活用が必要な状況にあります。

また、この年代では覚醒剤や危険ドラッグ等の中毒性薬物の問題はほとんど認められませんが、アルコール問題は少なくありません。

第五は、精神症状の原因が多数考えられる群。若年、中高年の時に一定の強さの精神疾患があり高齢になった場合。認知症の進行経過でBPSD(認知症に認める行動と精神の症状)が派生し、そのBPSDが多数あり勢いが強い場合。さらにせん妄が重なり遷延している場合。
身体疾患も合併していることが多く、他の群との重複も認められるために、評価と対応、治療が混乱する群です。
高齢者でも、若い方々の精神病状態(幻覚妄想状態、精神運動興奮状態)と同程度に病的興奮水準が高いケースがあります。中心となる心身の病態の評価が大変難しくなり、家族やスタッフの動揺と疲弊も強くなります。通常のケアや非薬物療法の工夫では対処困難となり在宅生活維持が極めて厳しくなることがあります。


 困難なケースについては、意識的な家族、介護施設、医療機関が懸命の努力をしていますが、家族と現場スタッフの燃え尽きの対応も大切です。

 行き場がないとの家族、ケアマネの相談が増えており、高齢化社会では、今後、この問題に増々直面していくこととなります。
 地域包括支援センターと高齢者行政との連携、また精神科病棟機能を有する医療機関の役割も重要になると考えられます。
第六は、がん患者緩和ケアやその他の身体疾患における終末期でのせん妄。終末期せん妄(terminal delirium)と終末期患者のせん妄(delirium in terminally ill patients)における様々な身体症状と精神症状の総合的治療と対応に取り組む臨床現場からは貴重な知見が積み重ねられています。

  認知症末期、身体疾患末期を含めた終末期ケア、看取りの経過でのせん妄が対象となる群です。