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漢方の話… 杏の里は、長寿村

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦


 5月、旧暦ではご存じさつき(皐月)、草月ですが、古語では、うめのいろづき(梅の色月)と呼ぶそうです。大好きな「民謡歳時記」には、新潟県柏崎地方の「三階節」が紹介されています。遅い春から夏への花暦です。「桃や桜に 梅の花 間(あい)に 海棠や山吹 すももに杏 梨の花 ハア梨の花」。

 さて、「杏(あんず)」は春に淡紅か白の五弁の花を咲かせます。古代に中国から伝わりました。カラモモ、カラヒトと言われました。その中国では、女性が眉根に皺をつくって、かすかに睫をふるわせるうっとりした表情を「杏眠」というそうです。初夏に梅に似た実を結びます。杏の種子を乾燥したものが「杏仁(きょうにん)」です。種に苦味のある「苦杏仁(くきょうにん)」と甘味のある「甜杏仁(てんきょうにん)」があります。薬用になるのは前者で後者は菓子などの食用に使われます。杏仁豆腐はその例ですが、今では、アーモンドエッセンスで代用されることもあるそうです。食用の杏仁は日本各地の杏でまかなわれますが、薬用はほとんど中国からの輸入です。漢方では「止咳・平喘・通便」の効能があるとします。杏仁油(杏仁を圧縮して得られる油)は保健薬として有名です。

 鎮咳・去痰作用:(1)麻黄湯(まおうとう、還魂湯ともいう)は、寒気、発熱、頭痛、関節痛、発汗なし、咳嗽、喘鳴がある。杏仁、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、甘草(かんぞう)で処方。(2)麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)は喘息で、咳嗽がはげしく、発作時に頭部に発汗して喘鳴を伴い、喉が乾くもの。杏仁、麻黄、甘草、石膏(せっこう)で処方。(3)神秘湯(しんぴとう)は、喘息や気管支炎でやや慢性的に経過し、咳嗽発作と共に呼吸困難を訴えるもの。杏仁、麻黄、甘草、厚朴(こうぼく)、陳皮(ちんぴ)、柴胡(さいこ)、蘇葉(そよう)で処方。

 通便作用:便秘、特に老人でみられる、便が乾燥したコロコロ便に使う。(1)潤腸湯(じゅんちょうとう)は、体力のない人で、兎糞。皮膚が乾燥。夜間の口渇がある。(2)麻子仁丸(ましにがん)は、潤腸湯と同じでコロコロ便の常習ですが、皮膚の乾燥は弱く、頻尿、夜間尿、痔核などがあるもの。

   さて、葉桜の時期に、「桜吹雪 うすにごり(広島)」を口に含んでうっとりと香を楽しんでいたら、「お疲れ様、眠いんですか」と。