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病気の話…認知症、精神症状について 
高齢者と精神症状  不安・抑うつ症状

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

老々介護、介護者の不安・抑うつ 

 80代のBさんは同年代の夫と二人暮らし。長男、長女は別世帯。夫は3年前に大腸がんの手術をし、さらに認知症を併存。この3年間、夫の身体の看病と認知症の対応、家事全般をしてきた。自身には高血圧症と不整脈があり循環器科に定期通院をしている。Bさんの趣味は読書と地域の歌声サークルだがその時間は無くなった。 不眠と不安の訴えで、昨年、当院精神科を紹介された。「今までは要介護の夫の介護を元気にしてきた。認知症だから理解できない事が多いが、家にいてくれるだけで良いと思っていた。最近は自分の身体も心配で自信がなくなっているのが実情」と胸中を語った。

 息子は仕事帰りに様子を見に来てくれる、娘は休みの日に話し相手になってくれて有難い。でも『一人で見ていくのは大変なのよ、本当は』とも言いたくなる。いつまで私一人で続けられるのか、子どもに迷惑をかけられないと考えると・・・。頭痛、眠れない日が」と続けた。

 160cm、47kgのやせ体型は、受診時43kg(BMI=16・8)とさらに体重低下していた。ジレンマ状況での葛藤、不安・抑うつ症状と考えられた。睡眠・生活リズムの改善のため少量の向精神薬治療を行うとともに、生活状況と方向性について話し合った。

介護する人を支える状況を見直す 

 Bさんの抱える悩みは日本中の老老介護現場での悩みでもある(資料:国民生活基礎調査平成25年)。「子どもに迷惑をかけたくない」「在宅でみていきたい」という思いと介護者の「心身の限界」「本音」との間での葛藤。

 伴侶、両親など要介護者の心身の状態は変化する。そして介護者も変化することを前提に長期的で広い視点を持つ事が必要になる。助言を整理する。

 (1)閉じた関係性としない。「愛情と優しさ」から「限界」まで無理をして行き詰る場合が多い。問題を抱え込まずに本音で家族と話し合う。

 他方、8/5の「NHKニュース」で興味深い調査報告が報道された。「認知症ではなかった、全国で3500人」、「診察すると認知症ではなかったケースを専門医の80%が経験している」との内容。

 (2)社会的資源の活用。地域包括支援センター、かかりつけ医療機関、ケアマネージャーなど課題を整理できるスタッフと冷静に話し合う。

 (3)当事者は要介護者だけではない。介護する人、それを支える家族全体と認識する。

 (4)葛藤から神経衰弱となる時は、答えの出ない矛盾した考え方と心理に当事者は陥っている。「優先順位」「マニュアル対応より状態の変化に応じた再評価と対応」「当事者全員の生活状況の総合評価」「現実性と責任感のもとの環境調節」といった視点を持つ。

 (5)介護者も自身の時間を持つことが大切。長い目で自分と要介護者の生活と健康を考える。