ニュース&トピックス

漢方の話…初春にめでためでたの 千鳥足

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦


 元日、江戸時代には武家方と異なり、町方は大晦日を経て初詣。帰ったら寝正月に入り静まり返っていました。唯一、2日の初売りを控え、日本橋魚河岸だけが、九つ時(12時ころ)から賑やかになり、提灯やでが昼間のようになったそうです。2日からは町方も賑わい、年始回りも始まります。正月は松の内が7日まで、6日夜には門松をしまい、しかし、15日までは松の小枝を残したそうです。年始には酒を出すのがしきたり。行く先々で2杯、3杯となり、冒頭の風景です。「川崎房五郎・江戸風物詩」。

 先日、患者さんから、「薬局で『松の実』がよいと買ってきたのですが」と尋ねられました。松は花言葉が「不老長寿」とめでたい植物です。「松の実」は生薬名では「松子仁」といい、中国では仙人が食べる「仙薬」といわれています。「松の実」を使った薬膳を紹介します。「胃腸虚弱・冷えで、食欲不振や下痢を起こすひとには」には、「鶏手羽」「高麗人参」「なつめ」「ニンニク」そして「松の実」を水につけた「モチ米」で煮込んだ「簡単なサムゲタン」。作り方は省略しますが、漢方の「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「六君子(りっくんしとう)」があう方にはお勧めです。「松の実」が気管支粘膜を潤す効能があるので、乾燥性の咳や喘息に、次のスープが紹介されています。「ユリ根」50g、「松の実」20粒、コンソメスープ400mg。「松の実」はオーブントースターなどで焼いておく。コンソメスープで「ユリ根」を炊き、カップに注ぎ「松の実」を添える。これがレシピです。漢方の「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」の合う方はお試しください。また、「松の実」はコロコロ便の便秘にも効能があり、また、皮脂を増し、血行を促すので美容にもよいといわれます。「松子仁」は保険漢方では生薬として登場しません。但し、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核「松塊(まつほど)」が生薬名「茯苓(ぶくりょう)」として、いろいろな漢方の構成生薬になっていますがここでは省略します。

 昨年、勉強会で岡山へ出かける機会があり、会終了後、「桃太郎まつり」のお城や名園を後に、「けんかだんじり」を控えた、中国勝山を訪ねました。岡山で初めての女性杜氏、辻 麻衣子さんが率いている蔵元の訪問です。杜氏には「寒仕込み」の前でお会いできませんでしたが、出雲街道沿い「旭川」の伏流水と「県産山田錦」から醸される、由緒ある「御前酒・鳳凰」をいただきました。また、現地が「男はつらいよ、完結編、48作、寅次郎紅の花」のロケ地だったのを知り、感動しきりでした。


 今年は「申年」。

 古書は、一番人に似ている「猩猩(しょうじょう)」が酒好きなのを利用してどう捕まえるかを事細かに記しています。「まず、酒の匂いで呼び寄せ、指で舐めさせ、一口飲ませ、腹一杯飲ませ、お互いに縛った草履をはかせ、酔って、歌を歌い、躍らせて、足がもつれたところを、御用にすると」。いやはや、逃げる気はないもののお手柔らかに。私事申年。