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病気の話…認知症、精神症状について 
高齢者と精神症状 嫉妬妄想(2)

嫉妬妄想をめぐる対話 

 嫉妬妄想にとらわれた女性Aさん、少しでも元の妻に戻って欲しい夫Bさん、両親を心配している長女と次女。夫婦の受診6か月後、長女Cが二人とともに来院。

 長女C 「最初は夫婦喧嘩かと思った。私達が知らないこともあるのかもと。先ずは母の話を聞いてあげた。『老人会に行かせておいて家に女を入れて私をバカにしている。サイズの違う下着を必ず置いて帰るからわかる』と延々2時間話し続けた。父から聞いた通り。母の気持ちで聞いてあげていると却って感情的で興奮してくる。」

  お父さんは精神症状を理解して1年以上適切な対応をしてきた。子ども達としては、母がどのような状態で、両親がどのような状況に陥っているのかを客観的に理解し、二人だけの問題とせず見守ることが先ずは大切」

 C 「テレビ情報では、認知症の人の妄想は、場面転換や、話を聞いて一緒に行動して受容していくと落ち着くとあったが、かえって興奮は強くなって私にも攻撃的な顔つきになった。」

  「マスメディアの医療情報は適切なものもあるが、一般に、程度の軽い症状についてのマニュアル化された部分的断片的情報に過ぎない事、そのまま自分の例に当てはめるとミスマッチの対応となりやすい事に注意。Bさんも対応が悪いのかと自分を責めていたが、適切な対応をしていた。改善しないのは精神症状の病的レベル(水準)が違うから。
 例えば、『妄想』という言葉。対応の工夫だけで問題が解決する『物盗られ妄想』は、誤認や猜疑心からの軽度の思考障害による『被害念慮』が多い、病的興奮水準は低い。
 Aさんのケースでの『嫉妬妄想』は、体系化された『被害関係妄想』という思考障害が病理背景にある。病的興奮水準が高く、行動化につながりやすい。ちなみに若い世代が使う『妄想』は、『空想(fantasy)』の意味で使われやすい、病的意味あいはない。
 生活場面で実際に起きている問題に則して、個別的、総合的に評価することが対応の基本。

 C 「母が妄想を私達に延々と語り出した時の対応は?」

  「体系化した被害関係妄想に関しては、聞く態度を持つことは大切だが、否定もせず肯定もせずに受け流すことが一般的な対応。同調して聴いてしまうと、本人の妄想をより確固としたものにすることがあるから肯定はしない。逆に、本人の立場では、『病的思考の世界での体験』は、『事実』なのだから、感情的なしこりを残さない、一人の病的世界に追い込まないために否定もしない。
ただし、危険な行為をするときは家族で注意し止める。自分への攻撃性、興奮が高まる時は、その場を一時離れ、複数で対応する。Aさんのケースは、初めて体験する家族には驚きだろうが、病的症状は未だ強いわけではない。」

 C 「感情的に巻き込まれてしまうから、なかなか難しい。私や妹は毎日ではないからいいけど父が心配。いつも穏やかで冷静だった父がとても憔悴している。」

 B 「子ども達には生活があるから心配かけたくなかったが一人では疲れ果てた。状況を理解してくれてホッとした。最近は夜中に起きだしても問い詰め始め、だんだん妄想の世界に入り込んでいる時間が増え興奮しやすい。現実の世界から遠ざかって向こうの世界に行ってしまわないか、心身が壊れてしまわないかと心配している。