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病気の話…認知症、精神症状について 
高齢者と精神症状 病的興奮(2)

  東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科 
  中島 昭  

他の人への影響 

 介護をしている現場で、対応が難しくなるのはどのような場合か。本人の症状が強いという問題と、家族や他の利用者への影響が大きいという問題がある。在宅介護での家族、在宅支援に入っているヘルパーとケアマネあるいは施設(グループホーム、老人ホーム、特別養護老人ホームなど)の介護スタッフからの相談で多いものは、大声、徘徊、暴力行為である。

 共通しているのは、本人の症状だけが問題となるのではなく、その症状が周りにいる人に影響を及ぼすという事。行動の症状であり、介護者が常に注意を払い目が離せなくなるという事である。

 例えば、夜間に大声があがるとホームでは眠っていた他の利用者が起きてしまう。老々介護の在宅ならば、休まなければ翌日疲弊してしまう家族が起きることになる。徘徊では、夜間に他の利用者の部屋に入って行き、休んでいた人が怒りだして、不安定さがフロア全体に広がってしまうことが問題となる。家から出て行ってしまう場合では、家族は寝ていられなくなる。昼間は見守りや手引き歩行をしている歩行が不安定な方が、人手のない時間に歩き出すとすれば、転倒や事故になりやすいので誰かがその方に個別対応する。そうすると他の利用者への介護対応が難しくなるという問題である。

徘徊は一つの事象ではない 

 ただし、何かが問題となっている場合は、一般性と個別性を意識して検討することが大切である。「徘徊」は辞書には「歩きまわること、うろつくこと」とあるが、小澤勲氏は「徘徊は一つの事象ではない」と解き明かす。「無目的と見えるような行動に徘徊という言葉を与えるとその行動がいかにも同じような成り立ちをもった行動と思いこんでしまう」と注意を促している。「徘徊」という事象があった際には、一人一人、徘徊の基盤にある病態も異なり、徘徊にいたる道筋も異なるとして、徘徊の諸相を五つ挙げている。(1)徘徊でない徘徊、(2)反応性の徘徊、(3)せん妄による徘徊、(4)脳因性の徘徊、(5)「帰る」「行く」に基づく徘徊である(「痴呆を生きるということ」岩波新書、2003年)。

 介護をしていく中で困難な状況になった時、すぐに対応の答えが出ないことも多い。しかし、その場合も、本人の精神症状、生活環境、介護者の状況、身体状態、栄養状態など様々な原因を個別に、具体的に再検討していくことが基本である。