ニュース&トピックス

漢方の話…薬まで春は目出たく呑んでさし

  鉄砲洲診療所 医師
  沖山 明彦

 

 屠蘇(とそ)については、ここでも何回か取り上げました。中国の伝説上の名医「華佗」が考案し、彼の国から伝わりました。中国ではその風習は廃れましたが日本では引き継がれました。今日の処方は戦国医学の統一者といわれる戦国時代末期の名医「曲直瀬道三(まなせどうさん)」の「屠蘇散」に従っています。道三は毛利元就や足利義輝、細川晴元さらに石山合戦後重病になった明智光秀も治療しました。くだって、江戸時代、庶民の屠蘇は薬屋から買うものではなく、医者からお歳暮として貰うものでした。医者への治療費は薬礼と称し、支払は盆と暮の2回、しかもこれは医者から請求すべきものではなく、患者が医者の技量や診療サービスをみて決めていました。医者からの屠蘇は治療費の領収書がわりといえます。「屠蘇散」を構成する基本生薬は、白朮(びゃくじゅつ)、桂皮(けいひ)、防風(ぼうふう)、山椒(さんしょう)、桔梗(ききょう)です。その後、この処方は少しずつ変化しています。

 ここでは桂皮(けいひ)をとりあげます。桂皮はクスノキ科、常緑高木ケイ(学名をシナモム・カシア)の木の樹皮です。昔から香料、薬料として使われています。エジプト、インド、ギリシア、中国と世界の医薬書にも多く登場し、あのミイラを作るときに用いられました。中国では桂皮と呼ばず桂枝(けいし)と肉桂(にっけい)を区別します。日本でいう桂皮は樹齢10年以上の樹皮である肉桂に準じるといわれます。日本の桂皮は中国の広南桂皮やベトナムの安南桂皮です。桂皮を含む処方を列挙します。発汗作用:悪寒、発熱の症状があり、汗が出ない場合は「麻黄」と配合した「麻黄湯(まおうとう)」を。汗がみられる場合は、芍薬・生姜と配合した「桂枝湯(けいしとう)」を。「桂枝湯は衆方の嚆矢(もののはじめ)、つまりこの処方がいろいろの処方の基本」。止痛作用:関節痛、筋肉痛などに用いる。「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」は関節リウマチに。冷えやストレスでの腹痛に、「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」。むくみや下痢、眩暈を抑える:「五苓散(ごれいさん)」は下痢、全身のむくみに。「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」は動悸や眩暈に。血行促進し痛みや失調を改善:月経困難症に「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」。月経不順や不妊症に「温経湯(うんけいとう)」。鎮静作用:不眠症に「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅこつぼれいとう)」。

 さて、11月から日本酒は仕込みが始まります。生協バスハイクで川場を訪れ、ナウマン象、農民一揆や隠れキリシタン、真田丸の歴史をひとっとびして蔵元へ、クジで一等賞品の「一斗ビン」をねらいましたが、「控えおろう」と猪口があたりました。昔は駄菓子屋でニッキ棒をなめていましたが、あれから○十年、猪口の縁をなめています。さて、歌舞伎 の「助六」の白酒売りの口上に、「…まず正月は屠蘇の酒、弥生は雛の白酒に、女中の顔も麗しく、ももの媚ある桃の酒。端午の節句は菖蒲酒。七夕は一夜酒。重陽は菊の酒…」がある。大先輩のMさんは、お酒がほどよくまわると、「箱根の山」とお酒の歌を披露された。「1月は正月で酒が飲めるぞ、飲める ぞ、飲めるぞ酒が飲めるぞ。2月は節分で酒が飲めるぞ、飲めるぞ、以下同文。3月はひな祭りで、以下省略」。江戸っ子Mさんの歌は「助六」の現代版か。91歳お元気です。誉国光(ほまれこっこう)で乾杯。