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鬼子母神診療所から…在宅看取り
最後まで末永いお付き合い(5)「繰り返す誤嚥性肺炎」編
鬼子母神診療所
所長 高岡 和彦 

生協組合員の皆様、今年のお花見は如何でしたか?「夜桜が良かった」「六義園のしだれ桜が見頃だった」「満開の桜の下で孫達と弁当を食べた」「忙しくて葉桜になっていた」「私は花より団子の口です」などなど色々なお花見を楽しまれた方が多かったのではないでしょうか?ゴールデンウイークが明けると暑い夏が到来しますので熱中症対策にご注意下さい。

さて、今回は「繰り返すむせ込みから誤嚥性肺炎を併発されたお婆さん」をテーマに「在宅看取り」の1例をご紹介いたします(実例を参考に架空の設定を行いました)。

今回の主人公は98歳の女性です。「戦争中の事を考えれば贅沢です」が口癖の8人兄妹の長女で頑張り屋さんです。戦後は妹達の世話と6人の子供達の育児に明け暮れたそうです。現在では、兄妹は他界し孫・ひ孫も独立し次男の家族と同居して週3回のデイケアと医学部3年生のひ孫と話をするのが楽しみのです。
90歳を過ぎた頃からむせ易くなり、年1回は肺炎にて入院治療を受けていました。2週間ほどで退院され元気にフィジカル・デイケアに通っていました。最近では体重も35kgと元々小柄でしたが一回り小さくなった様子でした。往診の医師からも「老衰が進みましたネ」と言われています。
3月の末に車椅子を押して近くの公園に花見に行った帰りに「桜の花は見納めだーね」の一言に「大丈夫だよ。来年は六義園まで行こうよ」と元気付けました。

ゴールデンウイーク前からゼロゼロと痰が多くなり38度の熱にグッタリの状態でしたので、臨時往診を受けました。主治医からは「誤嚥性肺炎で酸素吸入も必要だから入院しましょう」と告げられました。いつもなら直に従うお婆ちゃんが頑として入院を拒否しました。「先は短いから畳の上で最後を迎えたい」と力強く言われました。延命治療を希望されなかったので点滴や注射は行わず、在宅酸素と吸引機を導入し在宅にて緩和治療を行いました。介護保険を利用して毎日ヘルパーさんに来てもらい身の回りのお世話を家族と手分けして行いました。訪問看護師さんも週3回来てくれて身体のケアと家族の悩みを聞いてくれました。診療所から毎週、看護師さんと主治医の先生が来て診察をしてくれました。診療所の婦長さんは毎日・電話をかけてくれ様子を伺い家族のケアを行ってくれました。通院途中にチョット寄ってみましたと、主治医の先生が顔を見に来てくれ大変心強く感じました。ケアマネさんもチョコチョコ来てくれて安心しました。

幸い苦しむことも無く少しずつ痩せ衰えていくお婆ちゃんの姿を見つめながら、在宅ケアを続けることが出来ました。お婆ちゃんも「贅沢させてもらってありがとう」と感謝してくれました。6月末の日曜日の午後、お婆ちゃんは医学生のひ孫にそっと手を握り返して旅立ちました。

「終末期を在宅で迎える患者とその家族」に対して患者・家族の意志を尊重し、多くのスタッフがそれぞれの専門的立場から濃厚に関わる事で安心して「在宅でのお迎え」が出来ると思います。一人で悩み・抱え込まないで皆で問題点を共有して対応する事が「チーム医療」だと思います。安心してください。