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病気の話…まずは精神か身体か
判断力の問題(4)
東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科
中島 昭 医師

拒食症 第33回
食べない状態となった時に、どう考えていくか。精神的な理由であろうと身体的な理由であろうと食事量が落ち、体重低下が進んでいる場合は、本人の思考はまとまらず、情緒は不安定となりやすい。攻撃的となったり、逆に反応が低下し話さなくなったりする。食事、栄養に対して拒否行為が強まり、さらに低栄養になる。そして思考と気分・情動の混乱が拡大するという悪循環に陥っていく。対応はますます困難になる。
食思不振は精神面、身体面の問題がからみあっている場合が多い。精神的な問題を解き明かすべきだろうか。身体的な原因を探求すべきだろうか。家族はどうしても精神面の変調に目が先に行きやすい。しかし、精神は身体という自然で生理的な基礎のもとに機能している。当然、精査すべき対象は身体である。
かかりつけ医や内科受診をして、身体基礎疾患がある人はその変化を或いは新たな身体疾患がないかを探索することが最も大切である。精神機能の変調は、その上で対応することになる。そして体重低下と低栄養状態がどの程度のものかを評価する。体重、BMIとアルブミン、総タンパク質から現在の低栄養状態の程度を評価する。問診から元々の体重、これまでの最小体重、最大体重、体重低下がいつから始まり、どの位の期間で進んだかを聞きとる。日常生活にどの程度の支障が生じているかを評価する。

80代女性、25kg
148cm、25.2kgの80代女性が精神科初診となった。BMIは11.5。なかなか厳しい身体状態、体重である。待ち時間の間は、座っているのも疲れるために待合ソファーに横になっていた。若い時は45kg前後(BMI20.5)であったが、10年前に夫が他界し、徐々に痩せてきたと娘さんは言う。現在は娘家族と同居。診察室で、「最近は、階段の昇り降りでも息切れする。家の中は伝ってなんとか歩いている。今、一番辛いのは眠れないこと。すぐに目が覚め寝た気がしない」と本人は訴えると、これ以上は話したくないという態度であった。
身体面の既往歴は、50代と70代に胃潰瘍、発作性心房細動、75歳時には、脱水傾向と一過性脳虚血発作(TIA)で入院歴がある。現在の身体症状は、動悸、胃炎、息切れ、食思不振、低体重、脱力であり、特別な重い病気はない。血液検査での異常値は、総タンパク質6.0(正常6.7〜8.3)、アルブミン3.5(3.8〜5.2)、ヘモグロビン9.9(11.3〜15.2)であるが思ったほど悪い数値ではなかった。徐々に体重低下してきた経過のために、身体がなんとか低栄養、飢餓状態に適応させている状態である。頭部MRI画像検査では、低栄養と加齢による軽度脳萎縮を認めたが、変性疾患を示唆する形態異常は認めなかった。精神症状とその後の経過は次回。