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HPH…医療の民主化宣言
東京保健生協理事長・根津診療所所長
根岸 京田

第二次世界大戦の傷が徐々に癒え、先進国が華やかな消費文明を謳歌し始めた頃、発展途上国の健康問題が国際的な課題になり、先進国は医療援助として大きな病院を建設したり、最新の医療機器を持ち込んだりしました。
それらは現地の支配層や富裕層の健康には寄与しましたが、地域住民全体の健康状態は全く改善されませんでした。社会インフラが全く整備されておらず、国民の医療や保健に関する知識もいまだ迷信や呪術の中にある状態で、世界最先端の医療システムが機能するはずがなかったのです。

1978年世界保健機関(WHO)はカザフスタンのアルマ・アタで開かれた会議で、新たな健康の考え方として「プライマリー・ヘルスケア(PHC)」を提唱しました。これは先進国による医療援助がうまく機能しなかったことへのアンチテーゼの意味もありました。
その内容は、健康がすべての人にとっての基本的な人権であることを認め、その達成に向けて住民の主体的な参加や自己決定権を保証し、今ある地域資源すなわちその地域の住民同士のつながりや相互扶助の仕組みを活用し、医療以外の農業、教育、通信、建設などと協調する、などとなっています。
地域のニーズから乖離し権力者や富裕層のものになってしまった医療を住民の手に取り戻す、いわば医療の民主化を宣言したものともいえるでしょう。
現代の日本社会でも、経済格差を背景とする健康格差が広がり国政選挙や都議選での大きな争点となりました。「医療を民衆の手に」というPHCの提言は、現代にもそのまま通用する今日的な課題なのです。