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歯の話…摂食嚥下障害危険の常識、非常識その常識、実は危険かも
鬼子母神診療所歯科
歯科医 松島 里英

脳卒中後遺症や、高齢による筋力低下などで飲み込みが悪くなった状態を摂食嚥下障害といいます。摂食嚥下障害があると、誤嚥性肺炎や、窒息のリスクが高まります。では、高齢のご家族の飲み込みが悪くなり普通の食事を食べてくれない時、どんな物をどうやって食べさせますか。想像してみて下さい。ベッド上で少しリクライニングさせてゼリーを食べさせることを想像しませんか。そして、むせなかったら、大丈夫と思いますよね。リクライニング(後傾位)、ゼリー、むせないこと、この3つは全て、実は危険なことです。

リクライニングは危険? 〜姿勢について〜
後傾位では舌がスキージャンプ台のような斜面をつくり、すごく早いスピードで飲食物が、喉頭蓋という気管の堤防を越えて気管にとびこみやすく、誤嚥しやすくなるため危険です。座位姿勢の基本は前傾です。それができない時は、完全側臥位(フラットなベッド上で横たわった状態)が最も安全な体位です。完全側臥位法は、嚥下障害に対応できる新たな常識です。健康な人は空気の通り道である気管を上手く避けて食べ物を食道に送りこんでいますが、摂食嚥下障害の方は気管に入りやすい(誤嚥しやすい)ので、なるべく気管から遠い所に食べ物を通すという考え方です。この食べ方で、胃瘻をやめて口から食べられるようになる人も多いです。

ゼリーは危険!? 〜食事形態について〜
次に、ゼリーも危険なことが多いです。先ほどの堤防を乗り越えた時に、滑りのいい食材は気管に滑り込みやすいため、ゼリー、水分は誤嚥しやすい食材です。トロミをつけて滑り落ちるスピードを遅くした方が、誤嚥のリスクは減らせます。

むせないことは危険!?
最後に、むせなければ誤嚥していないのか?ですが、日常的に誤嚥していると、誤嚥していてもムセ(咳嗽反射)が起きなくなります。むせられる機能が残っていることは非常に大事です。よくむせていた人が何も対策をしないのにむせなくなった場合、よくなったのではなく、誤嚥に慣れてしまっている可能性があり、非常に危険です。

このように、姿勢や食事形態をどう変えれば、安全に口から食べ続けられるかを診る検査が嚥下内視鏡検査(VE)です。訪問診療でも行えます。歯科部までご依頼ください。一生食べて、しゃべって、笑えるお口を作るお手伝いをします!