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HPH…ストレスと人類との関係
東京保健生協理事長・根津診療所所長
根岸 京田

以前の連載で健康の社会的決定要因(SDH)のお話をしました。人は社会的排除、不規則な雇用、失業などの要因があると不健康になりますが、それらを個人で改善するのはなかなか困難です。
SDHの大元の原因は社会格差とストレスと言われていますが、社会格差もストレスも人間が集団生活を行なっている以上、避けることはできません。はるか遠い昔、アフリカの草原で生まれた人類の祖先は、走ることにも腕力にも優れたところがなく、一対一では猛獣たちの餌食になるしかありませんでした。そこでご先祖さまたちは、集団で生活し知恵を出し合って過酷な運命に挑戦することを選択しました。その当時から、群れの中の立ち位置や序列といった社会ストレスはあったはずです。動物の群れの大きさと脳の容積には相関関係があります。一人で生きている動物は、出会った相手が敵か味方かという単純な判断で済みました。しかし集団生活の場合、ある条件では味方だったAさんがBさんと一緒の時は敵になるなど、必要な情報処理が格段に増大します。そのストレスが大脳の発達を促したという説があります。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」(草枕:夏目漱石)
現代にあっても、人の精神的な健康や寿命への影響が指摘され悪者にされがちな人間関係のストレスですが、人類の長い歴史の視点で見ると、人類を人類たらしめた大きな要因でもあるのです。