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漢方の話---「肺」の臓、「腎」の臓、そしてお正月


  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

   肺の働きは、呼吸により宗気(大気)を取り込み、全身の「気」の流れをとりまとめます。また、水や食物の「気」の一部から「血」と「水」をつくります。さらに、皮膚の働きを制御して、その防衛力を維持します。次のような症候は、肺の異常を示しています。もちろん、咳や痰、喘鳴、呼吸困難、胸が塞がる感じ、そのほか、鼻汁があります。また、気管の乾燥、発汗の異常、皮膚の痒み、風邪を引きやすいのも肺の異常と関連します。精神面では憂いや悲しみも肺がおかされていると考えます。

 腎の働きは、成長、発育、生殖を司ります。骨や歯牙をつくり、維持します。泌尿器能や水分代謝をまとめ、調整します。呼吸機能を維持します。特に、思考力、判断力、集中力を保つのも腎の機能と漢方では考えます。従って、腎の異常は、性欲低下、不妊、むくみ、夜間尿など理解しやすい症状の他、次のこととしてもみられます。骨が弱くなり、歯が抜ける、腰痛、息切れ、耳鳴り、白内障など。そして、根気がなくなる、物忘れ、恐れ、驚きやすいのも腎の異常からと考えます。五臓の異常にも「陰」「陽」の異常を加えたみかたが加わりますが、それは省略します。

 お正月です。
 長唄「二人猩猩(ににんしょうじょう)」の舞踊で、二人の猩猩(人語を話し、赤い顔をした酒を好む人間のような中国の伝説上の動物がもと)が酒を酌む場面があります。その唄が月毎の酒をほめるもので、「正月は屠蘇・白散…」と始まります。正月のお屠蘇(「蘇」という悪鬼を屠「ほふ」る)は、中国三国時代の名医・華佗(かだ)の処方「屠蘇散」を日本酒に味醂や砂糖を加えたものに浸した酒です。
 「本朝食鑑(人見必大著)」では、元来の屠蘇酒を以下のように書いています。「毎正月一日の朝、これを飲むと疫病・一切不正の気を避という。 わが家の用法では、赤木・桂心・防風・はつかつ・山椒・桔梗・大黄・烏頭・赤小豆を三角形のあかいふくろに盛り、除夜に井底に懸け、元旦に取り出し、酒に入れて数分煮る。一家を挙げて東に向き、年少者より長に至るまで順次これを飲む。薬滓はまた井戸に投じて、歳毎にこの水を飲めば一世無病である」。
 なお、屠蘇散の処方はいろいろあります。井戸もないし、今流の屠蘇散はネットで買えますが、間に合わないし、純な日本酒で「おめでとうございます」。