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鬼子母神診療所から…在宅看取り
「学生時代にマラソン選手として夢を追い続けた男性のお話」編
鬼子母神診療所
所長 高岡 和彦 

組合員の皆様お元気ですか?インフルエンザの猛威も下火となり、春の足音が聞こえてきそうな今日この頃です。春は楽しいお花見もありますが、花粉症に泣かされる方も多いのではないでしょうか?季節の変わり目です、くれぐれもご自愛下さい。
新年の風物詩といえば箱根駅伝ですが、今年は東海大学が初の総合優勝を飾りました。今回の主人公は、学生時代にマラソン選手として夢を追い続けた男性のお話です。

北区在住の90歳の独身男性です。大学時代はマラソン選手として活躍し終戦後も色々な大会で42.195kmを駆け抜けたそうです。公務員として定年を迎えボランティアやシルバー人材で余生を送りました。
ここ数年は持病の膝関節症と腰痛で外出の機会も減り、物忘れも目立ち始めました。地域包括の担当者からは認知症初期集中チームの介入を薦められ、介護保険サービスや訪問看護・訪問診療がスタートしました。訪問診療では毎週、膝関節注射を実施しました。「昔のようにマラソン大会で走りたいね」が口癖となっていました。

11月末に転倒骨折後から寝たきりとなり、入院先の病院ではせん妄(認知症が悪化し、暴言・暴力など大暴れする事)を認め自宅に帰されてしまいました。その後、誤嚥性肺炎を繰り返しましたが訪問診療で小康状態を保ちました。衰弱も急激に進行しお正月が危ぶまれましたが奇跡的に持ちこたえました。
1月2日に発熱で緊急往診した時に、箱根駅伝を見ながら「僕も頑張らなくてはいけませんね」と言われました。医師は、「そうですね、でも、休憩する事も必要ですよ」と声を掛けました。「マラソン選手は、皆の声援を受け、途中で給水したりしながらゴールを目指します。疲れたら無理をせず休む事も必要ですね」と返されました。医師は頷きながら、そっと手を握って微笑んでいました。その後、少しずつ衰弱が進行し、食事も食べられなくなり意識も低下しましたが、苦痛は認めませんでした。
2月初めの日曜日の午後、ケアマネ・介護スタッフ・訪問看護師が看守る中、静かに旅立たれました。そのお顔は非常に安らかで、微笑んでいるようでした。

「終末期を在宅で迎えたいと思う患者さま」に対して多くのスタッフがそれぞれの専門的立場から濃厚に関わる事で安心して「在宅でのお迎え」が出来ると思います。一人で悩み・抱え込まないで皆で問題点を共有して解決する事が「多職種連携・チーム医療」だと思います。安心してご相談ください。