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病気の話…医療倫理の話「医療介護・現場と倫理(6)」
東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科
中島 昭 医師

第40回

自然な成長とは何か
30代自閉傾向の息子Aさん、母は10代の時に他界しており70代父Bさんと二人暮らし。一時期、施設で生活していました。施設には施設の良い所がありますが、父は定年後に再び自宅での息子との生活を選びました。Aさんは月曜から金曜の日中9時半から15時半までは地域の福祉園で過ごしています。

福祉園は障害者総合支援法を基にして利用者の生活介護などを行っている施設です。利用者は18才以上で知的障害がある方または知的と身体障害との重複障害がある方です。
Aさんは通っている園で、約40名の利用者とともに食事を始め、創作作業、趣味や自己表現の活動をして過ごすようになりました。担当支援員や所属する班の職員は、利用者それぞれの障害や発達の特徴に応じてより良い対応を心がけようと毎日話し合っています。保健、医療面では看護師2名が毎日利用者の身体と精神の健康面を注意深く見守り助言をしています。内科医による定期健康診断も行われています。
Aさんは普段は内向的で穏やかな性格なのですが、他の人にあわせて待つような時に興奮してイライラする事がありました。20代後半になると行動が大変激しくなっていきます。
園では突然走り出して他人がいようが目に入らず突進します。職員が制止しようとすると職員を叩いたり自分の頭を容赦なく叩く行為が激しくなっていました。常に少なくとも二人の職員がすぐ近くに付いて対応するようになりました。

一人で対応する父はどうしているのだろうか、家での生活を心配した担当者は父に何か変化はないかを聞きました。実はと父は話し出します。
「爪を切ってあげたり、風呂で洗ってやったりするといつも嬉しそうにしていた。それが、とても興奮して自分の頭を思い切り殴ったりするようになった。突然思いもかけない行動をする、危なくていつも見ていないといけない。言葉は話せなくても目をみると私の顔を見返してきてどんな気持ちなのか今までわかっていた、それもできない」と家での状況を説明してくれました。

私は毎月、この園に精神科の嘱託医として訪問しています。40人、落ち着いて生活を普段通りしている方もいれば、成長とともに様々な変化を見せる方も少なくありません。変化があった利用者については、その担当支援員と班のリーダーそして看護師から事情を聞きます。母や父が対応に悩んでいれば家族を交えて相談を受けるようにしています。
この時も園の活動が終わった後、父とスタッフらで話し合いを持ちました。「この子は3歳の時に発達が遅いと言われた、それは自分も妻もそうなのかなとわかっていた。でも身体は健康だった。この子の良いところも悪いところも全部妻と受けとめていこうといつも話していた」と父は生前の母と二人で息子を守り育ててきたことから話し始めました。「養護学校の高等部18才の時に健診をしたが、それ以降はここの定期健診も拒んで受けられない。薬も飲んだことはない。時々興奮することはあっても時間をおけば落ち着いた。今は毎日、爆発してしまう。飛び出してしまうから医者にもかかれないのではないか」と息子を心配する心情を語ってくれました。