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漢方の話…牡丹に唐獅子、竹に虎。牡丹に蝶は不成立。
鉄砲洲診療所
沖山 明彦 医師

5月5日頃から6月4日頃は「初夏」といい、この始めの5日から20日頃までをさらに、次第に夏めいてくる時期で「立夏(りっか)」とよびます。フジの花が咲き誇ります。花は美女に例えられ、フジの紫は高貴なもの、上品なもの、めでたいものと、「源氏物語」や「枕草子」に記されているそうです。
民間療法で、フジの老木にできる瘤を「藤瘤(とうりゅう)」といいその発癌抑制作用の報告などから、これに「菱実(りょうじつ)(ヒシの実)」、「訶子(かし)(インド・ビルマ原産のミロバランの実)」、「薏苡仁(よくいにん)(ハトムギの種子)」を合わせた煎じ薬が「船越の胃腸薬」として、売られたり、「WTTC」という名で商品化されたそうです。

「立夏」が終わると、「陽気盛ん万物ようやく生じ満つる」という「小満(しょうまん)」の期間に移ります。この季節の花は、まずスミレそしてボタンです。中国北西部原産で、漢名「牡丹」の音読みで、日本での古名は、花の福々しさから、富貴草、フカミグサと呼ばれました。
奈良時代の聖武天皇の頃、吉備真備が唐から持ち帰り、漢方薬として用いました。花を鑑賞するようになったのは平安時代からです。花言葉は「王者の風格」「風格あるふるまい」で、江戸時代に流行した子どもの「尻取り文句」の始まりが、「百花の王・牡丹と百獣の王・獅子」の組み合わせが「牡丹に唐獅子」です。また、「花札」に「牡丹に蝶」の図柄があるように、室町時代から「牡丹・蝶」は工芸品などの文様によく使われています。しかし、牡丹の花粉は多いのですが蜜は作らず、蝶は蜜を吸う吸水口がありません。牡丹に集まるのは甲虫類やセミの仲間で花粉を食べるものが多く、「牡丹に蝶」は芸術ではともかく植物や昆虫の世界では無理とのことです。
ボタンの根の中央の木部、芯を取り除いた皮を「牡丹皮(ぼたんぴ)」といい大事な生薬です。以下のような処方に含まれています。「温経湯(うんけいとう)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「午車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)」「八味地黄丸(はちちじおうがん)」「六味丸(ろくみがん)」など。
牡丹皮は炎症を抑える作用、血の滞りや血行異常を改善する作用が知られています。
「温経湯」は、口唇が乾燥する、手がほてる、頭痛、肩こり、下腹が冷える、粘っこい下痢、月経不順、帯下、腰痛、鮫肌などに用います。「大黄牡丹皮湯」は「切らずに治す盲腸薬」と言われた漢方です。比較的体力があって、発熱、発汗、下腹部痛があって便秘しがちで、尿がすっきりでないものの、月経不順、更年期障害、便秘、月経困難、痔疾、虫垂炎などの疾患。

N先生から栃木の酒「門外不出」をいただき、勢いで外に出る。団子坂下で「風の森・露葉風」にあたる。「初夏の花のような香りが立ち、香りにも勝る味が満ち」、一献清浄。