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漢方の話…別るるや夢一筋の天の川 夏目漱石
鉄砲洲診療所
沖山 明彦 医師

7月7日は、七夕祭り。天の川を隔てて、彦星(牽牛(けんぎゅう)星、わし座アルタイル)と妻星(織女(しょくじょ)星、こと座ベガ)が年1回の逢瀬の日。雨で川が荒れ、会えないとかわいそうと、笹の葉の短冊に天気が晴れるようになどと願い事を書きました。しかし、中国からこの伝説が伝わる以前から、日本ではこの日、水中に張り出した棚に、「機織り女(はたおりめ)」が控え、(稲の)花が良く咲くように、祈りを神に捧げたそうです。
ですから地方によっては、豊作のために雨がふる「七夕雨」を祈願し、7日の朝には短冊などは流してしまったそうです。中国伝説でも二人を合わせるのは鵲(かささぎ)ですから雨は心配なさそうです。
七夕ではサトイモの葉にたまった雨のしずくで墨をすり、墨ののりがよいので、カジノキ(梶)の葉の裏に願い事を書いたとか。カジノキは優れた和紙の原料で中国でも画仙紙に選ばれます。和名のカジノキは単に「梶(かじ)」とか「構(こう)」とか呼ばれ、中国名は「構樹(こうじゅ)」です。神道では神聖な樹木とされ、葉の文様は、あの諏訪大社の神紋にもなっています。
カジノキは和紙の原料以外に織物の原料でもあり、カジノキの皮から作られる白い繊維を「ゆう」といい、その繊維からの織物が、和歌によまれている「白妙(しろたえ)」です。河童橋や子ども地蔵通りの七夕まつりも楽しみですね。

さて、「七物降下湯(しちもつこうかとう)」をとり上げます。日本の漢方の大家、大塚敬節(おおつかけいせつ)氏が創製した漢方です。「釣藤鈎(ちょうとうこう)」・「黄耆(おうぎ)」・「当帰(とうき)」・「芍薬(しゃくやく)」・「川芎(せんきゅう)」・「地黄(じおう)」・「黄柏(おうばく)」の処方です。
「気(き)」による精神神経症状として、のぼせ、めまい、耳鳴り、頭痛、頭重、ねあせ、肩こり、下肢のしびれや痙攣があり、「血虚(けっきょ)」として、顔色不良、疲れやすい、皮膚は乾燥し、鼻血や眼底出血をみることもあります。「腎虚(じんきょ)」として、頻尿、多尿、腎障害がみられます。最低血圧が高い高血圧に有効とされます。構成している生薬から、「釣藤鈎」は「気」の異常による症状に対応し、鎮静・鎮痙作用を持ち、「黄耆」は滋養・強壮作用、特に「水(すい)」や「気」のめぐりを改善します。
「当帰」「芍薬」「川芎」「地黄」は「四物湯(しもつとう)」の処方で、疲れやすい、顔色不良、皮膚の乾燥という「血虚」に対応します。「地黄」は「腎虚」の頻尿、多尿を治します。この漢方は、食欲不振、下痢、腹痛を起こしやすい胃腸虚弱の人には、使用しない方がよいと言われますが「黄柏」は「当帰」や「地黄」によるそれらの症状を緩和する作用を備えてはいます。高血圧症は西洋薬でコントロールは十分できるのですが、付随する症状に漢方の併用も考慮してよいかもしれません。

「東京民医連退職者の会報」で、かつて太田病院でご指導いただき、最近もお世話になったS先生の喜寿(77歳)を知りました。さてお祝いは、「七人の侍」・「七賢」・「善七」・「大七」・「七田」・「七本槍」・「七冠馬」いややっぱり「木曾福島宿」の美しく清らか、豪快でおおらかな「七笑」で乾杯しましょう。今回の「七づくし」は「話」70号記念によります。