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HPH…握力は全身の筋肉量を知る目安〜フレイル予防とHPH
東京保健生協理事長・根津診療所所長
根岸 京田

今年も健診の時期が始まりました。今回は、前回の尿中塩分濃度測定に加えて、握力を測る事業所が増えそうです。
握力は全身の筋肉量を知る目安になります。筋力低下が様々な疾患や障害の増悪因子となり、死亡率や罹患率を上げることが予想されます。最近、世界各地で行われた調査で、握力と健康状態に密接な関係があることがはっきりしてきました。

福岡県久山町での20年以上にわたる調査では、握力が最も強いグループは最も弱いグループに比べ死亡リスクが約4割低下するという結果が得られました。カナダのマクマスター大学のグループは、世界17カ国の男女約14万人を対象に4年間の追跡調査を行いました。その結果、握力が5kg低下するごとに何らかの原因による死亡リスクが16%増加することが判明しました。握力低下による心血管疾患のリスクは17%増、心筋梗塞リスクは7%増、脳卒中リスクは9%増との結果でした。研究者たちは収縮期血圧よりも握力の方が、早期死亡の有意な予測因子である可能性を指摘しています。一方、糖尿病、呼吸器系疾患、転倒による外傷などとの関連性は見られませんでした。
英国グラスゴー大学のグループは50万人以上を7年にわたって追跡調査を行ないました。その結果によると、握力が5kg下がることに各種原因による死亡率は女性で1.20倍、男性で1.16倍になることが示されました。カナダの調査と違って、心血管死、呼吸器疾患死、大腸癌死、乳癌死にも有意な差があるとしています。握力の強さには個人差が大きく、今後の研究成果が待たれます。

握力は全身の筋力の一つの指標であるので、握力だけを鍛えても意味がありません。また、全身の筋力を向上させるトレーニングを続けていると、自然と握力も増加するものです。健診や班会の場で握力を測定し、それをきっかけに全身の筋力アップを図りフレイル予防に生かしていくことは、日本の超高齢社会におけるHPHの重要な役割です。