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漢方の話--- 夏まけの漢方

  鉄砲洲診療所所長
  沖山 明彦

 梅雨から夏に入り、湿度が高く暑い時期になります。漢方では、体表の湿邪(病気の原因になる湿気)は、発汗させるか、利尿を促し水分を除きます。体表からの発汗剤としては、風邪のときに紹介した「桂枝湯(けいしとう)」が用いられます。多汗症の人では、「防己黄蓍湯(ぼういおうぎとう):色白、水太り、筋肉にしまりがなく、汗かきで下肢のむくみや関節痛、冷え、また肩こりがあり、尿量が少ない」が使われます。
 発汗してから、薄着・冷房・扇風機などで冷える。これを繰り返すと、筋肉痛や関節痛、こむら返りなどになります。このようなときには、「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう):下肢のむくみがあって、自然の発汗はあるが、尿の出方が悪く、胃腸は丈夫だが足が弱い、関節痛や腫れがあり、皮膚発疹もみられる」などが用いられます。

 湿邪が胃腸に入ると、ガスがたまりやすくなり、お腹が張り、泥状便を伴うしぶり腹になり、時に嘔吐、頭痛がみられます。口の渇きが強く、つい水分がほしくなるときは、早めに、「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):暑気あたりなどで、激しい口の渇き、大量の発汗があり、冷水を欲し、顔は紅潮しているのに、背中や手足が冷えている」を使います。慢性的には、糖尿病で用いられます。この漢方は日焼けの初期にも有効といわれます。すでに下痢になった人では、「六君子湯(りっくんしとう):胃腸が弱く、食欲がなく、胃部につかえ感があり、下痢して、疲れやすく、手足が冷えて全身がだるい」を使います。かって中国では、夏にお茶代わりに飲まれたことで有名です。また、倦怠感がより強いときには、「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」も用いられます。

 夏やせ、夏まけの代表的漢方が「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」です。名前をみただけで効能がわかるようです。胃腸虚弱の人が暑さ負けで食欲不振になり、全身がだるく、汗をかき、下痢し、食後眠くなるような場合に適します。「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の、「柴胡(さいこ)」と「升麻(しょうま)」という生薬を、「麦門冬(ばくもんどう)」、「五味子(ごみし)」、「黄柏(おうばく)」に代えたものです。わった生薬は、鎮咳、消炎、鎮静、強肝・強壮、健胃・利胆、抗菌作用と力強い効能を発揮します。さて、夏の季語になっている酒に「甘酒」があります。江戸の風俗を現した「守貞慢稿(もりさだまんこう)」という書物に、「夏月専ら賣巡る者は甘酒賣」と描かれ、京坂はもっぱら夏の夜、江戸は四季に、鉄や真鍮の釜に入れ、それをハコに収めかついで、一碗6文から8文で売り歩いたとあります。この甘酒、ブドウ糖が極めて高く、必須アミノ酸、ビタミン豊富な総合ビタミンドリンク剤であったことが、お酒の研究者から報告されています。